きみに触れられない
私が一方的に話すばかりで、いつもハルは私の話を聞いてくれていた。

聞いてくれて、アドバイスをくれた。

勇気をくれた。

それなのに、私は。

ハルの過去も、現状も、何も見てこなかった。


それが悔しくて、悲しくて、もどかしくて、愚かしくて、仕方がない。


「どうしたの、こんなところで」


知った声が聞こえてきた。

同時にふわりと温かい風が手元に当たった気がした。

顔を上げて、私は目を見開いた。





「そんなに強く握ると傷になるよ」


「は、る」




私の固く握られた両手に重ねていたのは、ハルの手だった。

ハルは優しくて穏やかな、少し憂いた笑みを浮かべていた。
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