きみに触れられない
それから私たちは屋上に移動した。

その間私たちは何も話さなかった。






私が扉を押し開けて、屋上に出る。

屋上からは空が広く見える。

西の空に沈もうとする太陽、東の空の端は濃い青で縁取られている。

綺麗な色だと思った。

まるでハルの瞳のように透き通っていて綺麗だと思った。

同時に切なくなった。

ハルに掴めない手が、触れられない手が、もどかしく感じた。


「それで、教えてくれる?なんでみーちゃんが泣いてたのか」


ハルは屋上に寝そべりながら私に問う。


私はハルを見下ろして、だけど何も言わなかった。


ハルのことで泣いていたなんて、言えるわけなかった。


「そーやってまた黙って」

強情だねえ、とハルはあきれたように笑う。


一体誰のせいで私が黙秘しなければならなかったと思っている、と言いたいところだけど、それも言えない。

私はそっぽを向いた。

「すねないでよ」とハルはまた笑う。

そんなに笑われて子ども扱いされたらそりゃすねるわ、と思うけど、それをぐっとこらえて私はハルにいちばん聞きたかったことを聞いた。
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