きみに触れられない

夢の重さ、歩くレールの上

授業も全て終わって放課後になると、クラスのざわめきの中カナが話しかけてきた。

「今日の昼休み、どうした?」

__ああ、やっぱり。そのことだと思った。

昼休みからずっと話せずにいたけど、カナはずっと気にしているのだろうと思っていたから。

「昼休みはごめんね」

「いや、それは全然いいけど、それよりも」

それ以上詳しく話そうとしないけど、伝えたい内容は分かる。

「ちょっとね」

「ちょっとね、って、そんなことでミサが授業に遅刻するなんて滅多にないことだと思うんだけど」

確かに、と言えば、「だから、何があったって聞いてるんだけど」とカナは苛立ち始めた。

「屋上にいたの」

スクールバッグに教科書やらノートやらを放り込みながら、私は答えた。

「屋上?」

なんでまたそんなところに、とカナは不可解そうに顔をゆがめた。

「自分でも分からない」と答えれば、「大丈夫かよ」と溜息を吐いた。

大丈夫だよ、と言いたかったが、気が付けば屋上に続く階段の下にいてそのまま屋上に上って、極め付けには授業に遅れてきたなんて、とても大丈夫だとは言えない。

「大丈夫じゃないかも」

「ああ、そうだと思う。もう今日は早く休め」

カナはスクールバッグと白いエナメルのカバンを持って立ち上がった。

「塾あるから、ムリかも」

「ほどほどにしろよな」とカナは溜息を吐いた。
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