きみに触れられない
「まさかテストで欠点とったとか?」

「いや、それはない」

「模試の判定悪かったのか?」

「たぶん大丈夫だから」

度重なる両親の質問攻めに私はため息を吐いて「もう、着替えてくる」と2階の自室へと戻ろうと階段を少し上ったその時だった。

__ピピピピピ。

お父さんのケータイが音を鳴らした。

「はい、もしもし。米山です」

お父さんが爽やかな対応をする。

これが仕事でのお父さん。

なんだかいつもと違う様子に違和感を覚えつつも、私は上へ登ろうとした。


「えっ、遥幸くんが!?」


え?

お父さんのその焦った声に私は動きを止めて振り返る。


「はい…はい…」


焦った表情と声はいつも聞くお父さんの声ではなかった。

不安が募る。


「分かりました。今向かいます」


そういうとお父さんはお母さんに向かって真剣な顔をした。

「患者の容体が悪化したって病院から電話があった」

「今から行ってくるのね」

「ああ」

「気をつけて」

お父さんとお母さんは淡々と会話をするとお互い準備を始めた。


私だけ取り残されて、物事が次々に進んでいく。


どういう、こと?

ハルの容体が悪化したの?


めぐる思考回路は同時に不安を掻き立てていく。
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