きみに触れられない
ドタドタと走り回るように両親は準備をして、1分もたたないうちにそれは終わった。

「じゃあ、行ってくるから」

玄関で靴を履きながらお父さんは焦ったようにそう言った。

「ええ、気を付けて」

お母さんはお父さんにカバンを渡した。

「ちょ、ちょっと待って!」

私は思わず声をかけた。

2人とも驚いたように私の顔を見た。

「どうしたの、美咲?」

「悪いけど、お父さん急いでるんだ。また後で聞くから」

いい子にしてなさい。

お父さんは私の頭をなでる。

「長瀬遥幸って人の容体が悪化したんでしょ!?今からその人のところに行くんだよね!?」

頭の上に乗っかるお父さんの手を取りながらそういうと、お父さんは目を見開いて驚きの表情をした。

「美咲、なんでそれを知って…」

「私、その人の友達なの!」

それからお父さんの目をまっすぐ見据えた。




「一生に一度のお願いです。

私も一緒に行かせて」




一生に一度、なんて、半端な気持ちで言ってない。


きっと今お父さんについて行かずにハルに会わなかったなら



一生、後悔する。



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