きみに触れられない
ハルのいる病室に向かうと、その廊下に男子高校生がたくさんいた。

みんな俯いていて、悲しそうな、悔しそうな、苦しそうな表情をしている。

そのなかにカナの姿を見つけた。

「カナ!」

私が叫ぶと、カナははっと顔を上げて驚いたような顔をした。

「み、さ?」

慌てて駆け寄る。

「どうしたの?」

「それはこっちのセリフだよ」

確かに、と納得した。

「ハル先輩がやばいって…連絡が来て、それで来た。

ミサ、どうしてミサがここにいるんだよ?」


思わず言葉に詰まる。


「私は…」


私は、何のためにここにいる?

どうして両親に『一生に一度のお願い』までしてついてきた?

衝動?

いや、そんな一時の気の迷いなんかじゃない。


「会いたくて来た」


一高校生の私に何ができるのかなんて分からない。

それでも会いたくて、会わなきゃいけないって思ったからここにいる。


後悔は、したくない。


「お、おい、どこに行くんだよ、ミサ!」


カナの声に応えることなく、私は病室へ入っていった。
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