きみに触れられない
二度目の病室は、人でいっぱいだった。

ハルが横たわるベッドはお父さんをはじめとする医者や看護師、おそらくはハルの家族で囲まれていた。

その間から微かに見えたハルは何か管のようなもので機械とつながれていて痛々しかった。

私は思わず叫びそうになる口を押える。


医者と看護師は口々にハルの状態や何かの数値、専門用語を叫ぶように話していて一体何を話しているのか分からない。

ハルの家族は互いに手を握り合って、目元に涙をためて悲しそうに祈るようにハルを見つめていた。

何かの数値が下がったと、看護師が焦ったように叫ぶ。

医者が何か指示を出すけど、一体全体どうなっているのか分からない。

ただハルは無事なのかどうなのか、それだけが知りたいのに、その情報は飛び交っていない。

分からない。

それが無性に腹立たしくてしかたがない。



「ハルの馬鹿!」



気が付けば私は叫んでいた。

突然の大きな声に、医者も、看護師も、ご家族も、みんなが驚いた様子で私を見ていた。

普段なら嫌な、一斉注目。

だけど今はそんなこと気にしている場合じゃない。

私は驚くみんなの間をかき分けてハルに近づく。
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