きみに触れられない
「あんた、いつまで寝てるの!さっさと起きなよ!」


突然の説教。

みんなはポカンとして、それから慌てて「美咲ちゃん!」と止めに入る。

「ちょっと離れてて、今は…!」

知り合いの看護師さんがそういうけど、キッと睨んだ。


お願いだから、この場から私を連れて行かないで。

私、ここから離れたくない。


そんな強い思いを込めて睨むと看護師さんは驚いた様子を見せた。

私が誰かに対してこんなに強い感情を向けたことはない。

静かで大人びている。

それが私を表す形容詞だったから。


「ハル!大体、昨日のは何なの!」


私が叫んだことに、看護師さん、ご家族はもちろんのこと、お父さんまで目をまん丸にして驚いていた。


『もうすぐ身体からきちんと切り離されて正真正銘ユーレイになる、そんな存在だよ』

昨日のハルの言葉が脳内で繰り返される。

もうすぐ身体から切り離される。

それってつまり、ハルが死ぬってことでしょう?


「なんであんたが諦めるの!」


ぼす、とハルの顔の近くのベッドを殴る。
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