きみに触れられない
ダメじゃん。

そんなんじゃ次の試合に出れないじゃん。

最初に思ったのはこれだった。

せっかくみんなからエース!って言われてたのに。

キャプテンからも頼りにしてるって、監督からも期待してるって言ってもらったばっかりなのに。

まだ奏人に教えたいこともたくさんあるのに。


だめじゃん。

こんな状態じゃ、何もできないじゃん。

なんとかならないのかよ、この状況。


はっと周りを見渡すと、泣き崩れる家族とうつむく医者と看護師の姿が目に入った。


ああ、だめなんだ、俺。


どうしようもないんだ、俺。


もう死ぬしかないんだって思った。

どうせ俺は近いうちに死ぬって。


それからはもう開き直った。


どうせ死ぬなら、今まで行くことができなかったところを行こうと思った。

部活ばっかりで、ほとんど家と学校の往復だったから。


それからはいろんなところに行ってみた。


海とかショッピングモールとかも行ったけど、いちばん長くいたのは学校だった。


図書室とか美術室、音楽室なんかはすごく楽しかった。

けれどいちばん行きたかった場所があった。


__それが屋上だった。
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