きみに触れられない
『ハルの馬鹿!』

みーちゃんは病室に来るといきなり叫んだ。

病室にいた全員が目を丸くして驚いた表情を見せる。

俺はなんだか可笑しくなってクスクス笑った。


まさかみーちゃんがこんなことを言い出すなんて。


『あんた、いつまで寝てるの!さっさと起きなよ!』


説教に突入しているし、こんなに怒るみーちゃんは初めて見たかもしれない。

でもみーちゃんが怒っている姿は一生懸命で可愛い。

そんなことを言ったらみーちゃんはさらに怒るだろうけどさ。


怒っているかと思ったら、止めに入った看護師さんに強い目で訴えた。

ああ、みーちゃんは変わったなとあらためて思った。

自分の想いをさらけ出せるようになった。

同年代ではない人に対しても、ちゃんと伝えられるようになった。


みーちゃんは『あんたのせいで、どれだけ私が変わったと思ってるの!』って言うけど、俺は言葉をかけただけだ。


確かに俺の言葉がみーちゃんに何か変化を与えたのは分かってる。

だけどそれを良い方向に導けたのは、紛れもないみーちゃんの力。

俺の言葉なんかをたよりに頑張った、みーちゃんの力だよ。


それにしても『なんであんたが諦めるの!』っていうのは、結構胸に刺さる。

だけど俺、もうどうしようもないんだよ。

こんな状況になってさ。

昏睡状態に陥って、何ができると思うの?

逆に聞きたいくらいだ。
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