きみに触れられない
エピローグ
ハルが目を覚ましてから1週間。

病院ではハルが目を覚ました日から今日まで大騒ぎだったそうだ。

来る日も来る日も検査と測定の繰り返し。

突如何かの数値が激減したのにも関わらず、回復、正常値まで戻って目を覚ましたハルのことが信じられない出来事だったそうだ。

でも私はハルなら何でもアリな気がした。

ハルにならできにことなどないと思っていたから。


「それにしても美咲はかっこいいな」


ようやく家に帰ってきたお父さんは、みんなで晩御飯を食べているときにそう切り出した。


「なんで?」

「あんなに危険な状態の友達を目の前にして、周りを囲む病院スタッフをかき分けて、説教を始めるんだからなあ」


父さんびっくりした、とお父さんは笑う。

私は恥ずかしくなってそっぽ向いてお茶を飲む。


「しかも、告白までしちゃうんだから、驚きだよなあ」

それも、親の前で。


思わずお茶を吹きだしそうになった。

何を言い出すんだ、突然。

キッと睨むようにお父さんを見るとお父さんはニヤついた顔をしていた。


「あらあ!そうなの?」


お母さんまでニヤニヤした顔をする。

すんごく嬉しそうなのはどうしてだろうか。


「なんにせよ瀕死の状態の患者に告白するとは大胆ねえ」

「まあ、そりゃあ好きな人が瀕死の状態ともなれば『一生のお願い』も使うだろうな。正しい使用法だ」

2人して納得したと言わんばかりにうんうん頷いている。

私は居心地が悪くなって「ごちそうさま」と立ち上がった。
< 262 / 274 >

この作品をシェア

pagetop