きみに触れられない



ハルが目を覚ましてから半年以上が過ぎた。

3年生、春、5月。

さあこれから受験に向かって頑張ろうとスタートして1か月が経った。

クラスは進度別に分けられて、綾芽ちゃんとは別のクラスになってしまったが、カナとは一緒のクラスだ。

鎖縁度合がまたも急上昇しているが、保育園から高校3年生になるまで同じクラスだなんて確率で言うとどのくらいだろうか。

もはや計算の仕方を考えるのも面倒なくらいだ。

今までと同じような環境だけど、私が今までと違う。


「ミサ!」

「ゆうきちゃん!」

「今日どっか遊びに行こ?」

「いいね!行こう!」


新しいクラスで友達になったゆうきちゃんと話していると、突然後ろから声がした。


「米山さん」

「吉田くん!おはよう」

「なあ、あの宿題分かった?」

「あれ難しかったよね~」


仲のいい友達もできて、おまけに男子とも普通の会話ができるようになった。

私にしては大きく前進だ。


ハルと出会えたことで私は自分でもいい方向に進んだと思う。


友達関係のことについてもそうだし、将来のことに関しても。


ハルと出会う前まで迷いに迷っていた将来の夢は、かっちりと固まりつつある。

ハルに出会う前までよりずっと、今は脳外科医になりたいと強く思う。

あの時ハルが目を覚ましてくれて、本当に、本当に、嬉しかった。


あの感動を、あのときだけの奇跡にしたくない。


できるだけ多くの人に、あの感動を、喜びを。

その手伝いがしたいと強く強く思うようになった。

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