きみに触れられない
「きみは変わらないね」


私に声をかけてきた人物はゆっくりと私に近づく。

私の視界は徐々に滲んでいく。


「また泣いてる」


「バカ」


私は涙をぬぐいながら必死にそういった。


「えー、いきなりバカはひどくない?」

「私が誰のせいで泣いてると思ってるの」

「俺?」

「あんた以外にありえないでしょ」


私はキッとそいつを見つめてそう言った。




「ハル」



ハルは困ったように笑いながら「そうは言われてもねえ」と言った。

「久々の再会なのに、バカはないよ、みーちゃん」

「うっさい」

私はそっぽ向いた。

「大体、なんで教えてくれなかったの。今日復学するって」

「だって連絡手段とかないし」

するとハルは私の隣にきて「だけど奏人から聞いたでしょ?」と言った。

「聞いてない」

そう答えると「あらま、それは残念」とさして残念がってもいない様子でさらっと答えた。

もしかしたら今日の朝礼の前にカナが言おうとしたのがそのことだったかもしれない。
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