きみに触れられない
「やっと、ここにこれた」


ハルは顔を上げてそう言った。

晴れやかな顔だった。


触れる手に伝わる体温が心地いい。


「みーちゃん、好きだよ」

「私も」


私が即答すると、ハルは一瞬面食らった顔をしてそれから笑った。


「なっ、何がおかしいの!サイッテー!」


バカ!と殴ると、「痛い痛い」とハルは全然痛くなさそうに言う。


「なんで笑うの」

「嬉しくって」


ハルは笑うのを落ち着けて、私の頬にその手が添えられた。


「好きでいてくれてありがとう」

「こちらこそ」


それから少し微笑んで、そっとキスをした。

ふわりと風が頬をなでるように吹き渡る。


__あの日、屋上に上ってハルに出会ってから今まで、一体どれだけのものをハルがくれただろう。

それらすべてに感謝の気持ちでいっぱいだけど、「ありがとう」と言って回っては時間が足りないし、「ありがとう」の言葉だけでは伝えきれないほどに感謝している。

伝えきれないから、せめて何度だって言いたい。


「ハル、ありがとう」


きみへ向かう想いを、何度でも。






-fin.-
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