きみに触れられない
「塾なら仕方がないよ」

気にしないで、と岩田さんと森谷さんが言う。

「また今度行こう」

「うん…」

優しい言葉に頷くと、岩田さんと森谷さんは川島さんを交えて話を始めた。

「あのカフェ、新メニューが出たんだって、知ってる?」

「知らないわよ」

「よく知ってるね」

「それがまた美味しいらしくてさあ!」

3人は仲良く話を始めた。

私はその姿を後ろから眺めていた。


__憧れてた、ずっと、憧れてた。


でも手にできなかった。


きっと何回もめぐってくるチャンスではなかった。


それなのに、私は。


悔しくて、悲しくて、拳を握りしめていた。

カナは何も言わずに私を見ていた。


私はなんだかとても屋上に行きたくなった。

屋上で空を眺めたくなった。


ハルに会いたくなった。



__ハル。


私はあなたという友達ができたけど。


私はやっぱり、変われないまま。


変わらない日常から抜け出せないままだ。


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