きみに触れられない
「それに2人が頑張ってるんだから、私も頑張らなきゃね」

そう言うと、カナは足を止めた。

「どうしたの?」

振り返って尋ねると、カナは心配そうな顔をしていた。

そして静かな声で一言、頑張りすぎんなよと言った。

「頼りたいときは頼ればいい。1人でごはん食べるのが辛いときは、うちにくればいいって、母さんも言ってる。

ミサちゃんはうちの家族だからね、って」

「おばちゃん…」

「いつでも気軽に来ればいい。お隣さん同士なんだから」

カナが笑うので、私もつられて笑った。

ふとカナの大きなエナメルのことを思い出して、「カナは今日も部活なの?」と尋ねた。

「練習は毎日だからな」

楽しそうな真剣な顔をしていたけれど、私の方を見てクスッと笑った。

「なんて顔してるんだよ」

「いや…毎日運動するとか私には考えられないから」

カナはサッカー部だ。

まだ3年の先輩がいるのに、2年生にしてレギュラー入り。

期待の新エースらしく、試合では結構得点する。

この前試合を見に行った時には、カナがチームの中でいちばん得点していた。

自由自在に、縦横無尽に、ボールを追いかけて操る。

到底私にできる芸当ではない。


「まあ、ミサは運動には縁がない生活してるからな」


ムッとしたが、何も言い返せない。

運動は大の苦手だ。できる限り関わりたくない。


「ミサも何か部活に入れば良かったのに」

園芸部とか、文芸部とかさあ。

カナはそう言うが、私は首を横に振った。
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