きみに触れられない
それから何時間か過ぎて昼休みを告げるチャイムが鳴った。

今日もハルに会いに屋上へ行こうかと考えていると、「米山」と先生から呼ばれた。

ハンカチで汗をふきながら手招きしている先生のもとへ向かうと、「いやあ、悪いねえ」と言われた。


「米山、今日お前が日直だろ?これ職員室まで持っていってくれないか?」


これ、と指差されたものを見ると、それはみんなの課題ノートだった。

クラス全員分、40冊のノートだ。


「は、い」


一人で持っていくのか、これを。

持てるだろうか、どうやって持ったらいいか、不安に思っていると、「あ、でも、さすがに一人でこれを持つのは厳しいよなあ」と先生は言った。


「誰か手伝ってやって。うーん、じゃあ…ああ、川島!いいところにきたな!」


慌てて振り返ると川島さんが私の後ろを通りすぎようとしているとこだった。


「何ですか?」

「お前、米山を手伝ってやれ」

「えー、今からですか?」

「忙しいか?用事か何かあるのか?」

すると川島さんは「別に、何もないですけど」と口ごもった。

「それならよろしくー」と先生は教室を出ていった。

「ほんと、人使い荒いんだから」と川島さんは溜め息を吐いて、それから私の方を向くと困ったように少し笑って「さっさと持っていこう」と言った。

私は呆気にとられつつも「あ、うん!」と返事した。

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