きみに触れられない
「それで、どうしたの?」

「え?」

いきなり話を振られて驚いて声が出る。

「あたしに話したいことがあったんでしょ?」

「どうして、それを」

「顔を見てたら分かるよ」


米山さん、分かりやすいから。


いつかハルにも言われたことを、川島さんにも言われてしまった。


「米山さんがみんなの前で何かを発言するなんて滅多にないでしょ?」


そうとう言いたいことがあるんだって分かったよ。

川島さんはジュースを一口飲んだ。


「でも、米山さんがすごく緊張してるのが分かったし、多分きっとあの場では言いにくいことなんだろうなって思ったんだ。ここなら人がいないから大丈夫かなって思ったんだけど」

いきなり連れ出してごめんね、と謝られた。


「そんな、謝らないで」


私は慌てて首を横に振った。


「いろいろ、私のことを考えてくれてありがとう。ミルクティーも、すごく美味しかった」


そう言って笑うと「良かった」と川島さんは安心したように笑った。


__川島さんは不思議な人だ。

読書しているときはクールそのものなのに、こうやって話しているときは明るくてこんなにもフレンドリー。

とても不思議だけど、でも、もっと仲良くなりたいと思ってしまう魅力がある。
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