きみに触れられない
「あのね、今日ずっと川島さんに言いたかったことがあって」


私はミルクティーを持つ手にぎゅっと力を入れながら語りだした。

川島さんは真剣に聞いてくれるようだった。

それがすごく、嬉しかった。


「今日の昼、手伝ってくれたの、本当に嬉しかった。ありがとう」


すると、川島さんは吹き出して笑った。

吹き出すどころか、お腹を抱えて笑い出した。


「えっ、なんで笑うの!?」


慌てて聞けば「だって、可笑しくて!」と少し涙目になりながら息を整えている。


「だって、それ、昼休みのことでしょ?
それをずっと言いたかったの?
言いたくて、放課後、立ち上がってあたしを呼び止めたの?

なにそれ、面白すぎ」


川島さんはついに声を上げて笑い出した。

恥ずかしくなって、いたたまれなくなって、私は顔を真っ赤にしながら俯く。


「米山さんって、本当に可愛いね」

川島さんは息を整えながら穏やかな笑顔で言った。


「そんな、可愛くなんてないよ!」

「純粋で、まっすぐで、すごく可愛いよ。
憧れるくらい」

「そんな、憧れだなんて!」


私は否定したけれど、一瞬言葉が途切れそうになった。

川島さんが、一瞬だけ寂しそうな笑顔を見せたから。


「むしろ、私の方が川島さんに憧れているのに」


すると川島さんは目をまんまるにして驚いた表情をした。
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