きみに触れられない
「何をどう話せばいいんだろうって。こんな話題をふっても大丈夫なのかなって。言い方とか、どうしようって。うまく喋れるかなって。

いろんな考えが出てきて、頭がショートしたみたいに真っ白になって、結局何も言えなくなるんだ」


話しながら、泣きそうになった。

ああ、嫌になる。

涙なんてどうして意味もないのに出てくるのだろう。

私が泣き出したりしたら、困るのは川島さんなのに。


それに、川島さんは私の話を聞いて何を思っただろう。

面倒な奴だと思ったかな。

嫌な奴だと思ったかな。

私の想いは、伝わったのかな。


怖くて俯いていると、川島さんは「へえ、そうなんだ」と相槌をうった。

まるで「明日の2限自習だって」と言われたときのような反応だった。


おまけに「米山さんって、可愛いだけじゃなくて優しいんだね」だなんて予想外なことを言った。

「へ?」

ついて行けなくて、私は目をまるくした。

本当に、何を話していらっしゃるのだろう、この方。

すると川島さんは微笑んで、「米山さんは優しすぎるんだよ」と言った。


「きっと米山さんは、たくさんのことを気にしすぎてるんだと思う。

自分が言ったことでどうなるんだろうって、すっごく考えて、考えて、考えすぎて結局言えなくなるんだと思う。

違うかな?」

私は頷いた。

川島さんの言葉がすーっと胸に落ちるように入ってくる。
< 57 / 274 >

この作品をシェア

pagetop