きみに触れられない
私がうまく伝えられなかったことを、川島さんは汲み取ってくれた。

言葉に乗り切れなかった想いさえ、思いを馳せて読み取ってくれた。


そのことが、嬉しくて、胸がいっぱいになった。


「きっと、すごく考えてしまうのは、米山さんが悪いってわけじゃないと思う。

米山さんが優しすぎるから。

優しすぎるから何も言えなくなるんだとあたしは思うよ」


だからね、と川島さんは話を続けた。


「すごく優しい米山さんのこと、米山さんが責めないであげてね」


それから川島さんは笑った。


「あたし、米山さんと話したこともなくてよく分からなかった。でもね、今こうやって話を聞いて、米山さんがすごく好きになった。

もっと仲良くなりたいなって思った」


川島さんは立ち上がると私の前に来て手を差し出した。


「え?」

「今まで分かってあげられなくて、気づいてあげられなくて、ごめんね。
それと、これからよろしくね」


にっこり微笑まれて私は戸惑いながら手を差し出した。

震える私の手を川島さんはぐっと握った。

私はついに泣き出した。

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