きみに触れられない
みんなにとって当たり前なことが、私にとっては当たり前じゃなくて。

ずっと願って、苦しんできた。

そのこともカナはずっと知っていてくれたから。


今、私がどれだけ嬉しいか、きっとよく分かってくれるんだと思う。


「良かったな」

カナは何度も言ってくれた。

私は何度も「ありがとう」と言った。

たかが友達ができたことを、まるで自分のことのように喜んでくれる心優しいひとが幼馴染みで本当に良かった。





それから時間は流れて昼休み。

4限の終わりを告げるチャイムが鳴り響いて、教室はざわめき始める。

いつもは自分の席で食べているけど、今日は、今日だけは、1人で食べたくない。

私はお弁当箱を持って教室を出た。


向かう先は、屋上


__ハルの待つ場所。

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