きみに触れられない
扉を開け放って外へ出ると、眩しいくらいの光が降り注いで目が眩んだ。

私は日陰を選んで座り込んだ。

7月も中旬。

太陽の下にいるのは、直射日光を浴びるのは、さすがに辛くなってきた。

__ハルはいないかな。

あたりを見渡しているけれど、姿は見えない。

__まあ、約束も何もしていないもんね。

当然いるものだと思ってここまで来たけれど、ハルだって人間だ。

そりゃあ、いくら屋上が好きだからっていつも屋上にいるとは限らない。

屋上に行けばハルに会えると思っていた自分が浅はかだったかもしれない。

そんなことを思いながらお弁当を広げる。

お茶を一口飲んで、赤いミニトマトを食べようと口を開けた。


「美味しそうな弁当だね」


私は口を開けたまま、視線だけ声が聞こえた方向に目を逸らした。

固まった。


「トマト、食べればいいのに」


ハルはまるで笑いを堪えているというような表情でこちらを見ていた。

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