きみに触れられない
「信じたいって言ったけど、心からは信じられなかった。

だって、自分のことをちゃんと伝えられるのか、ちゃんと伝わるのか、本当に自信がなかったから」


人と話すのが向いていないこと。

話そうと思ったら、何を言えばいいのか分からなくなって言えなくなってしまうこと。

そんなこと、誰にも理解されないってずっと思ってた。


「でも、ハルが言ってた言葉を何度も思い出して、勇気をもらった。

頑張ろうって思えた」


『大丈夫だよ』

『絶対伝わるよ』


ハルの真っ直ぐな目が、前向きな言葉が、私に勇気をくれた。

私を、変えてくれた。


「私、言えたよ。ちゃんと、全部言えた。

そしたら、全部伝わった。分かってもらえた」


絶対ありえないと思っていた。

身内以外に分かってくれるひとがいるなんて、思っていなかった。


それなのに、いた。


分かってくれるひとが、いた。


それがどれほど嬉しかったか。


「友達に、なったの」


ハルは私だけじゃなく、私を取り巻く環境すら変えてしまった。

ひとりぼっちだった私が、ひとりぼっちじゃなくなった。

たったそれだけ。

たったそれだけのことが、私にとってどれほど大きかったか。

たったそれだけのことで、私がどれだけ救われたか。


きっと、計り知れない。

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