きみに触れられない
「ハルが私を変えてくれた。変わるきっかけをくれた。

言葉をたくさんくれた。勇気をたくさんくれた。

きっとハルがいなかったら、私はきっと自分のことを言えなかった。

友達もできなかった」


全ては、ハルに出会えたから。

ハルのおかげだ。


「本当に、ありがとう」


頭を下げれば、ハルは「顔をあげてよ」と言った。


「俺はそんな感謝されるようなことなんて何もしていない。

友達ができたのは、気持ちを全部伝えることができたのは、みーちゃんが頑張ったから。

俺の言葉を信じてみたいって、俺の言葉を思い出して、みーちゃんが頑張ったから。

だから、俺のおかげなんかじゃない。

みーちゃんが自分の手でつかみ取ったんだよ」


それからハルはくしゃりと笑った。


「みーちゃん、良かったね」


じわり、心が幸せで満ちていくような心地がした。

ただ、ハルは私が頑張ったからだと言ったけど、私はやっぱりハルがいなかったら何もできなかったからハルのおかげだと思う。


「本当に、ありがとう」


何度お礼を言っても足りないから、せめて何度だって言いたい。

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