きみに触れられない
「でも、あいつは幼なじみで…」

だから特別なんじゃないかな。

それ以外に特別な理由なんて、何も。


「へえ、幼なじみクンなんだ。みーちゃんの特別なひと」


その声でハッと意識を戻すと、ハルはニヤニヤ笑っていた。

「みーちゃん、独り言の声おっきいね」

「ま、待って、あいつは幼なじみだから、そういう意味で好きなわけじゃなくて…」


言い切る前にハルは私の言葉を遮るようにして楽しそうに言った。


「みーちゃんはその幼なじみクンのことが気になるんだよね?」


ハルはまるで暴走しているかのようだった。

なんだか危ない方向に突っ走っていきそうな勢いがあった。


「気にならなくはないっていうか、その前にあいつは…」


ハルの暴走を食い止めようとなんとか試みるものの、効果はなく。


「みーちゃんが幼なじみクンのことが好きなら、俺、2人のキューピッドになってもいいけど?っていうか、キューピッドになるから!」


「はあ?」


「みーちゃんの恋愛大作戦だよ!」


「はあ!?」


ハルの暴走はいきつくところまでいきついてしまった。

私の叫びは宙に舞う。


ハルは目を輝かせてやる気に満ちている。

私は思わぬ展開について行けず、ただ溜息を吐いていた。

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