きみに触れられない
「寝不足になるまで勉強するなよ」

身体壊すぞ、というカナの言葉にムッとした。

一体だれのせいで眠ることすらできなかったと思っているんだ。

言いたかった言葉は飲み込んで、「しょうがないでしょ、テストが近いんだから」と言った。

「テストが近いからって、体を壊したら本末転倒だろうが」

「塩谷君こそ、部活しすぎなんじゃないの?体を壊したら本末転倒なの、塩谷君だってそうでしょ?」

ちょっとした仕返しのつもりでそういえば「お前なあ」とカナは溜息を吐いた。

「部活と寝不足じゃ違うだろうが」

「でも、塩谷君には言われたくないよ」

カナ、私はあんたのせいで眠れなかったんだよ。

「お前、どれだけ勉強するんだよ。ちょっとは休め。じゃないと…」


カナが言い終わらないうちに、綾芽ちゃんが「あの」と入ってきた。


「なんか、仲が良いね。塩谷君とミサって」


不思議そうな顔をして、私とカナの顔を見比べる。

私とカナは顔を見合わせた。

しまった、失敗したと私は思った。

叫びたいほどに、しくじった。

私はカナと幼馴染なことがばれたくなくて、カナにわざわざ『米山さん』と呼んでもらうようにお願いした。

その理由もちゃんとカナに伝えてある。

なのに、私の対応がきっとどこかで間違えたせいで、仲が良いと思われてしまった。

どうしよう。

思考回路はショート寸前だ。
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