きみに触れられない
話の中心だったカナを失った私達は、必然的にバラバラと解散して行った。

特に私に対してカナのことをどう思う、などと聞かれることはなかった。

少しほっとした。

助かったと思った。


皆がそれぞれの場所へ戻る中、頭の中でカナの言葉が響いていた。


『ごめん。巻き込んだ』


その声は罪悪感に満ちていて、とても苦しそうで。


きっと、カナは私が想像しているよりずっと、私のことを考えてくれていた。


皆から注目されることが、好奇の目で見られることが、すごく怖くて嫌だと私が言ったから。

ずっと注目されないように注意を払って過ごしてきたから。

そのことをカナは知っていたから。


だからきっと、カナは助けてくれた。

カナはわざと『俺たちめっちゃ仲良いから』なんて言い方をしたんだと思う。

話の方向を、みんなの注目を、付き合っているか否かということから小学校からずっとクラスが一緒だということに逸らすために。

私が嫌な思いをしなくて済むように。


あの時、ちらりと私を見た、あの顔。

私を心配してくれているんだって一目で分かった。

カナの、あんな不安そうな顔。

カナがあんな顔をするのは、誰かを心配しているときだけだって、分かっているから。


私達は、幼馴染だから。

小学校に入学するよりずっと前から一緒にいる、大切なひとだから。


__ねえ、カナ。

カナは私にとって大切なひとだよ。

それはずっと変わらない。


カナはずっと昔から、私のヒーローだ。

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