きみに触れられない
『わかんねえけど、ミサがいて、おとうさんがいて、おかあさんがいて、まいにちごはんたべて、よるはほしをみて、それで、たのしかったらいい!』
それからにっこり笑った。
今も昔も変わらない、白い歯を見せるカナの笑顔。
期待していた答えではなかったけれど、その笑顔を見ていると妙に納得できた。
確かに、それもいいのかもしれないと思った。
夕焼けに染まる街の中、見上げた空のオレンジが好きだと思った。
__他愛もない、幼い頃の思い出だ。
*
「ミーサ」
綾芽ちゃんが私を呼ぶ。
「あ、なに?どうしたの?」
すると綾芽ちゃんは心配そうに手を腰に当ててため息を吐いた。
「どうしたの、じゃないでしょ」
それからずいっとその整った顔を私に寄せる。
「さっきから問題も解かず、読書もせず、何ぼうっとしてるの」
何をしていたのかこっちが聞きたいくらいだと綾芽ちゃんは言う。
慌てて広げていたノートを見れば、確かに何も書いていなかった。
解いていたはずの数学の問題は途中で終わっている。
「ほんとだ、何ぼうっとしていたんだろう」
私が呟くようにそう言えば、本当に、と綾芽ちゃんはまた溜息を吐いた。
それからにっこり笑った。
今も昔も変わらない、白い歯を見せるカナの笑顔。
期待していた答えではなかったけれど、その笑顔を見ていると妙に納得できた。
確かに、それもいいのかもしれないと思った。
夕焼けに染まる街の中、見上げた空のオレンジが好きだと思った。
__他愛もない、幼い頃の思い出だ。
*
「ミーサ」
綾芽ちゃんが私を呼ぶ。
「あ、なに?どうしたの?」
すると綾芽ちゃんは心配そうに手を腰に当ててため息を吐いた。
「どうしたの、じゃないでしょ」
それからずいっとその整った顔を私に寄せる。
「さっきから問題も解かず、読書もせず、何ぼうっとしてるの」
何をしていたのかこっちが聞きたいくらいだと綾芽ちゃんは言う。
慌てて広げていたノートを見れば、確かに何も書いていなかった。
解いていたはずの数学の問題は途中で終わっている。
「ほんとだ、何ぼうっとしていたんだろう」
私が呟くようにそう言えば、本当に、と綾芽ちゃんはまた溜息を吐いた。