きみに触れられない
「何か心配ごと?それとも悩みごと?」

そう問われるけど、心配なことも悩みごとも特に思い当たらず首を横に振った。

「ちょっと眠かったのかも」

そう言って笑えば、綾芽ちゃんは「心配して損した」と言う。

慌ててごめんと謝れば、「何もなくてよかった」と綾芽ちゃんは微笑んでくれた。

「何かあったら必ず言ってね」

「ありがと」

するとその時ガラガラと扉は開いて担任が入ってきた。


「はい、朝礼始めまーす」

その声で学級委員が「きりーつ」と号令をかける。

ぞろぞろと立ち上がって気だるげに挨拶を済ませるとすぐに席に着いた。

私は先生の話を聞きながら窓の外の空を眺めた。


__今は朝だから、空はオレンジじゃないけれど。

でも、どこまでも続いているような広さは。

何でも包み込んでくれるような優しさは。

あの時見上げた空と同じだと思った。

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