きみに触れられない
「将来の夢は建築士になって、そこに住む人が安心して、楽しく暮らせるような家をデザインしたいです」


背筋を伸ばして凛として夢を語る。

その姿は眩しかった。

綾芽ちゃんが、建築士。

きっと現場をビシビシ引っ張って、素敵な家をデザインして、カッコイイ大人な女性なのだろう。

大人な女性へ成長した綾芽ちゃんは簡単に想像できる。カッコイイ。


「そう、素敵な夢ね」


先生はにっこり笑った。


「じゃあ、次は岩田さん」

「はい」

岩田さんは立ち上がると、ちょっと緊張した面持ちで語りだした。


「私の将来の夢は、デザイナーになることです。デザイナーになって、いつか世界的なファッションショーに自分の作品で出てみたいです」

岩田さんはほほを赤らめていた。

きっと緊張しているのだろうことがよく伝わってきた。

拍手が巻き起こって、岩田さんの頬はさらに赤くなった。

「デザイナーって、服作るの?」

男子の一人が興味津々に問いかける。

「それもしてみたいって思ってる」

岩田さんは少し恥ずかしそうに、でも、楽しそうに答えた。

「すっげー!」

まるで小学生以下の反応をした男子に笑いが起きて、クラスが包まれる。

「じゃあ、次、塩谷君」

次に呼ばれたカナは「はい」と返事をした。
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