きみに触れられない
カナはなんて言うのだろう。
幼なじみだけど、カナの将来の夢は知らない。
小学校の時に聞いた、『たのしかったらそれでいい』しか分からない。
それから変わったのだろうか。
それとも変わらず、楽しい生活を送りたいですと言うのだろうか。
カナの周りの男子はカナが何を言うのかとニヤニヤした笑顔で見守っている。
カナは「ニヤニヤするなよ」と小声で笑っていた。
それからカナは前を向いて「僕は」と話し始めた。
「天文台職員になりたいと思っています」
凛とした声だった。
「前から宇宙が好きだし、もっと宇宙のことを知って今まで誰も知らなかった宇宙のことを知りたいと思います」
カナは、真っ直ぐだった。
堂々と恐れることなく自分の夢を語った。
ずっと変わらない、私のヒーロー。
だけど、変わっていた。
気づかないうちに、変わっていた。
大きい背中も、真っ直ぐで凛とした表情も。
カナは、あの頃のカナじゃなかった。
「ヒュー、カッコイ!」
「奏人クン、ステキ!」
冗談めいて騒ぎ立てる男子たちに、クラス中が笑った。
「うっさい、からかうなよ!」
カナは笑いながら彼らに突っ込むと席に着いた。