きみに触れられない
それからチャイムが鳴り響いて、4限目の授業は終わりを告げた。


そして昼休みが始まり、ざわめき出すクラスの中、先生が私を呼んだ。

呼ばれた理由は、大体想像できる。

「ごめんね、何度も呼び出して」

「いえ」

「進路希望調査のことなんだけど」

その単語に、やっぱりかと肩を落とす。

「すいません、まだ書けていないです」

すいません、と謝ると、先生は、まだ大丈夫だよと微笑んだ。


「でも、そろそろ出してくれないと困るかな」


__先生は、優しい。

提出期限なんてとっくに過ぎているのに、それもすごく重要な書類なのに、私を怒らない。

普通なら、こっぴどく叱られて保護者呼び出し、なんてこともあり得そうなのに。


「今週中には出してくれる?」

「…はい」


私が頷くと、先生は荷物を抱えて「よろしくね」と教室を出て行った。

私はその後姿をずっと見ていた。


今週中に、提出しなくちゃならない。

まっさらな調査用紙に、将来の希望を書かなければならない。


その事実に苦しいくらいに頭が痛くなった。


どうしようもなくハルに会いたくなった。

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