きみに触れられない
「違う」

私は首を横に振った。

「綺麗だよ」

それでもハルは言う。

「でも…!」

また否定しようとした私を遮るようにハルが言う。

「俺が綺麗だと思ってるから、他のだれが何と言おうが、みーちゃんは綺麗なの」

分かった?

まるで聞き分けのない子どもに言い聞かせるような口調だった。

子ども扱いされているようでちょっと嫌だったけど、ハルの言葉はすうっと胸に落ちた。

ぐつぐつ煮えたぎっていた炎が収まっていくような感覚だった。


「何があったの。いきなりそんなことを言うなんて」

私は気まずくてそっぽを向いた。

「はい、こっち向く!」

ハルは相変わらずの子ども扱いだ。

まるで私を4歳児と同じだと思っているんじゃないだろうかとさえ思えるような対応だ。


「あのね、さっきの時間…」

私はついに語りだした。


「ふーん。それで、みーちゃんは逃げ出した、と」

「違う、逃げたわけじゃない!」


ハルは私の説明が終わるとそんなことを言ったので私は慌てて否定した。


「で、みーちゃんは何を悩んでるの?」

「そっ、それはっ、……」

言葉が詰まった。

言おうとした言葉が胸につっかえて出てこない。

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