きみに触れられない
「後悔するかどうかなんて、今は分からない。

考えても、どうしようもないよ」


「どうしようもないなんて、分かってるよ!」


私は立ち上がった。

ただの八つ当たりだ。


「知ってるよ、そんなこと!でも考えてしまうんだよ!」

「考えすぎなんじゃないかな?だって__」


「ハルに、何が分かるの!」


言ってはならない言葉を言ってしまった。


ハルは目を見開いて固まった。

普段私が出しているよりずっと大きい声で叫んでしまった。


「ハルに、ハルに私のことなんて分かるはずない!」


興奮で、息があがる。

ああ、ダメだって分かってるのに。

こんな風にハルに当たったって仕方がないって、分かっているのに。


「そうだね、分からないよ」


興奮して大きな声を出す私とは対照的に、ハルは静かに言った。

心臓を突かれたように胸がドキンと痛んだ。恐怖で。


「俺はみーちゃんじゃないから、みーちゃんがどんな状況にいるのか、どんなことで悩んでいるのか、全然分かんないよ。

だから、教えてほしいんだ」


ハルの言葉は真っ直ぐで。

嘘も偽りもなく、夏の空みたいに透き通る。
< 96 / 274 >

この作品をシェア

pagetop