同期♂と私、ときどき熊♂

「で?なんでここにいるんだ?」


「いいじゃないですか。遊びに来たって」


彪賀の配属になったボウリング場。


やはり男手がいる。機械に強く、メカ担当で回され、裏がメインだった。


営業スマイルができない彪賀は、表に出すには顔が怖すぎることもあった。


ボール詰まりやマシンのトラブルで、フロアからの指示で裏から回る。


インカムで連携を取り、客の動きを止めておく。たまに酔ってふざけて投げる者もいるからだ。


直ったらフロアから客に投げてくださいと案内する。


休憩中だった彪賀のところに、コーヒーを飲みに寄った鹿目。


「……悪かったな」


わざわざ来なくても、という顔で。酔って潰れてうろ覚えだが、

なんとなく、何かをやらかした記憶はあった。


「家にいても落ち着かなくて」


クマコが来たことを話す。
あくまでも、彼女らしい相手が押し掛けて来た、という体(テイ)で。


「じゃあ」


あんなに焦る必要なかったじゃねえか、と言いたかったが、もう手遅れだ。


彪賀の感覚では、嫌われていたらわざわざ会いにも来ないだろうし、

会いに来たわけでなくても、いたら避けられるだろうと。


「…今度、飯でも行くか?」


「遠慮しときます」


何とも思われていなかったのか、と密かにショックを受ける。

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