同期♂と私、ときどき熊♂
「ワシを負かして、パーフェクト、もしくはノーミスで掛かってこい。そうしたら認めてやる」
「ええっ!?」
せっかく花を持たせるのが趣旨のイベントなのに。個人的な事情で勝手な真似はできない。
レーンには、中ほどからピンにかけて、ボールの滑りをよくするためのオイルが塗ってある。
そのオイルとボールの相性があるのだ。なので、どれだけ練習していいスコアを保ったプロでも、
体調やレーンとの相性ひとつでボロ負けになることもある。
逆を言えば、ハウスボールの直球しか投げられない素人が、レーンとの相性がいいだけで、
どこに投げてもストライクになる可能性もゼロではないのだ。
そして最後の最後まで答えがわからないスポーツではある。
「…それは」
「自信がないか?もしくはそんなもんか?お主の気持ちは」
小さな体でふふんと見上げる父。ううっ、と怯む彪賀。
「お父さん?なんだか知らないけど、無理言っちゃダメよ?困ってるじゃないこの人、彪賀、くん?」
見かねた母が。
「あら、なかなか素敵な人じゃない?独身??うちの子、どう??」
父が割って入ると、
「こやつに負けるわけにはいかん!勝負をしようと思う」
あらあら、また始まったわね、という顔で。
「ごめんなさいね?この人、言い出したら聞かなくて」
「あっ、いえ…」
鹿目をちらりと見る。
「うっ、負けらんねえ…どうすりゃいいんだ」