同期♂と私、ときどき熊♂

ルールは簡単だ。


3ゲームのセットで、交互に投げ、成績を競う。


「マジか…」


彪賀はボウリングの神様を初めて怨んだ。


どこにどう投げてもピンが飛ぶ。


もしかしたら、これまでの人生で一番調子がいいかもしれない。


困った。


勝ちすぎだ。


負けなくては。いや、勝たなくては。


ジレンマで押し潰されそうになりながら、足も痛みが出てくる。


それでも。


もう2ゲーム目の終盤でノーミスだ。


がっしりした体格で、基本しかめっ面の見た目に反して、

メンタルが弱いので、激しい胃痛も襲っていた。


「ちくしょう…いてて」


「大丈夫ですか?少し休みます?」


顔色が悪く、弱っていることに気付きはじめた鹿目。


本気出すなって言ってたくせに、と思っていたが、どうやら事情が違うようだ。


「大丈夫だ…」


通常、調子が悪く、ボールを変えたりするもので、


父も母も他の客も、同様にボールを変え、立ち位置を変え、工夫している。


それでも歯が立たなかった。


皮肉なことに、彪賀の場合は逆の理由で変えていたのに。


すべてが裏目に出る。
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