同期♂と私、ときどき熊♂

休憩室で、


鹿目と熊谷が、


楽しそうに話している。


2人きり。


「おい」


彪賀が、声を掛けても聞こえていない。


まるで2人の世界だ。


「おい!なんで聞こえねえんだ!?聞こえてんだろう!?なあ」


一面に張り巡らされた、ガラスの扉のようなものに阻まれ、中にも入れない。


「安在!!」


ガラスを叩いても聞こえない。
苛立って舌打ちし、激しく叩くが伝わらない。


「くそ!!」


そのうち何かを言われた鹿目が、頬を赤らめて、頷く。


「なん…!?」


目の前で、


2人が抱き合い、キスをした。


「やめ……!!」


と、


ウエディングドレス姿と、タキシード姿に変わった。


景色も教会に変わる。


「返してもらうで、かなめ」


振り向くと、熊谷がクマオになり、にやりと笑う。


いきなりお姫様抱っこすると、驚いた鹿目も、幸せそうに満面の笑みになる。


そして手の届かないところへ走っていく。


「行くな!!!安在!!」


バン!!と


ガラスを叩くと、不意にヒビが入り、ガラスがパリン!!と音を立てて割れた。


まるでその向こうが崖だったように、前に体ごと崩れ落ちた。


「うわーーっ!!」


はっ!!


と、目が覚める。


明け方。


空が明るくなりかけている自分の部屋で、うなされていた。


「………夢…?!」


髪の毛まで汗びっしょりだった。


「ちくしょう!!!」


やり場のないもどかしさに、頭を掻きむしる彪賀。


感じたことのない嫉妬心と不安が、悪夢を見せていた。

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