同期♂と私、ときどき熊♂

本当は、抱き締めたかった。


唇を奪いたかった。


仕事場でなければ。


食事に誘っても、何を言ってもはぐらかされる。


40過ぎの、大の男が。


けれど。


惚れている。確実に。


もう、誰にも取られたくなかった。



けれど、


好きのひと言は、


あのときの、あの場で精一杯だった。


酒の力を借りなければ、酔った勢いでもなければ、言えるわけがない。


彪賀は、もどかしさに頭を掻きむしった。
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