同期♂と私、ときどき熊♂

帰りに、ゲームセンターに寄ってみた彪賀。


夜勤の鹿目がクレーンゲームの扉を開け、作業している背後から、こっそりと近付いてみた。


「お疲れ」


ばっ!!


と振り向き、顔があると反射的にずざざっと後ずさり、機械の陰に隠れる鹿目。


腰から繋がった鍵束の紐が絡まる。


「あからさまに避けんな。怪しいだろうが。っていうか、ちょっと傷付くぞ」


「だって」


泣きそうになる。立場が逆転したようで悔しかった鹿目。


「だってじゃねえ。俺だって態度に出やすいんだからな」


「自慢するところじゃないです…」


は~っ、


とため息をつくと、


「…悪い。御厨と小西にバレた。時間の問題だ」


「え~~っ?!一番バレたらダメな人たちじゃないですか」


それでも、目を見て話そうとしない鹿目。意識しすぎてまともに顔も見られない。


不倫なわけでもなく、それが元で問題を起こしたわけでもなく、バレても問題はないが、


人に気を使わせるのが嫌だった。気を使っているわけでなくても、そんな気がする。


そしてなにより、結婚相手探しが目的の、腰掛けと思われるのが嫌だった。


いっそ、さっさと寿退社でもできれば楽だろうけれど。


まだ入社して一年も経っていない状態では、さすがにどうかと思う。


だから社内恋愛は面倒だ。
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