同期♂と私、ときどき熊♂

何年ぶりとか言っていた割りには、コントローラー捌きが早い。


ゲームセンターの機械も昔と違い、画像も綺麗で画面も大きくなっている。


背景すらCGが駆使されている。動きが滑らかだ。


得意な使用キャラも決まっているらしく、決め技も隙がない。


接戦のようだが、やはり葉月の方が有利な感じだ。


「負けらんないっすよ!!鹿目ちゃんとデートかかってるんですから!!」


気合い充分で袖捲りする葉月。


「こんな奴とデートするんなら俺たちもその権利くださいよ」


「あっ!俺も俺も」


「え~っ?!」


やはりゲーマーたちの人気者だった。


旅行だの家電製品の豪華景品にはあまり興味のない客ばかりだ。


賞品は一年分のフリーパスなどの場合が多いが、


このままでは賞品の代わりに、『鹿目とのデート権』争奪戦になりそうだ。


店としては経費が掛からず、ありがたい話だが。


「私だって、スタッフの意地に掛けても負けられません」


むしろボウリングの方が得意だった鹿目が、こういう風に言うときは自信のないときだった。


「…安在…」

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