同期♂と私、ときどき熊♂

「…夢を見ました」


数日後、少し落ち着いた鹿目が、見舞いに来た彪賀に。


毎日少しでも顔を出していた。


対向車線から、前の車を追い抜いて直進してきたトラックが

右折しようとした鹿目に気付くのが遅れ、正面から突っ込む形で

跳ねられ、小柄な鹿目が宙を飛ばされたのだった。


あと数㎝ずれていたら、その場で確実に命を落としていたのだ。


5日、意識がなかったらしい。時間のある限り、付き添っていた彪賀。


結局、緊急事態でゲームセンターのイベントは延期になった。


とはいえ、鹿目が参戦することも、もうないだろう。


彪賀のことが公になったこともその理由だ。


あんなオヤジのどごがいいんだと、鹿目のファンが嘆いたそうだ。


「夢?」


「あれは、いわゆる三途の川というのでしょうか、とてもきれいな大きな川がありました」


「安在、お前、よく帰って来れたな」


危なく死にかけたのだと、改めてぞっとする。


あんな形で会えないまま、この世からいなくなられたら、本当に立ち直れない。


「クマオとクマコに、まだ来るなって言われました」


「あいつらが?!っていうか、先に逝っちまってたのか結局」


心配の種がひとつ減ったことに、内心、胸を撫で下ろす。


やはりまだ、どこかで影に怯えていた彪賀。
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