モノクロの世界で
「…何?」
「席お隣なのっわたし津川 りえって言いまっす!よろしくねっ」
眉を潜めながらのお世辞にも愛想が良いとは言えない私の言動に対し、屈託なく笑顔で答えた津川さん。

この子は何を考えているのだろうか。
こんな、愛想もない私に、話したら気分が悪くなるのは目に見えているじゃないか。
私の噂だって聞いたことがあるだろうに。
他に友達だってたくさん居るのに。
―どうして…





「…。」
私は何も言わずに席を立つと、一人今だ笑顔をこちらに向けている津川さんなんて放って、廊下へと向かっていた。














津川さんのあの行動を
『同情しているだけだろう。』『偽善ぶりたいのか。』


そんな風に考えることなど容易に出来たが、どうしてもそうは思えない自分がどこかに居た。


…少し、嬉しかったのかも知れない。
馬鹿じゃないのかと、廊下の片隅で一人自嘲気味に呟いた。
< 14 / 48 >

この作品をシェア

pagetop