モノクロの世界で

二階のお兄の部屋に行くと入り口付近に『de'gel』と店名の入った綺麗に畳まれたエプロンがあった。
「…まったくもー…」



自転車置き場から自転車を出し、籠にエプロンの入った紙袋を入れる。

お兄のバイト先は自転車で十分程の所にある小さなケーキ屋さんだ。パティシェ志望のお兄はオーナー…って言うのかな…に頼み込んでバイトがてら色々と教えてもらっているらしい。週二回、火曜と土曜のバイトで、学校が終わってから急いで行くからこんな事も何回か有った。

―でもこの日だけは、いつもと違った。











―カランカランカランっ
「いらっしゃいませぇ!」
店内には甘いお菓子の香りが広がっている。
ショーケースの中には宝石のようにきらきら光る苺の乗ったショートケーキや金箔の乗ったチョコドーム。造化で飾られた木の棚の方には綺麗に包装されたクッキーやパウンドケーキが置いてある。
…おいしそう…。

本来の目的を思い出し、店員さんの所へ行く。


「…あ…の…すみません…釧路 直人(クシロ ナオヒト)…居ます…か…?」
そう尋ねると
「はいっ居ますよっ妹さんかな?今あちらの方に…」
そう言いながら奥に広がるテラスを示す。

「…あ…ありがとう…ございます…」

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