ファースト・キス
二週間前まであんなに秋、秋言ってた大翔は前とは違う真剣な表情で私に話した。

「ルリ。俺、留学しようと思う。」


突然の告白に私は驚きが隠せなかった。

「えっ?!……秋はもう知ってるの?」

「いや、知らない。ルリ以外まだ知らない。秋には出発する日まで隠しておく。」


私は少し嬉しさを感じた。大翔はいつも自分より秋を優先させていた。私はそんな秋が羨ましかった。

「……何をしに行くの?」


私は恐る恐る聞いてみた。

「アメリカにバスケしに行く。有名なコーチがそこにいて、前から誘われてたんだ。」

「すごいね!どのくらい行くの?」

「最低でも5年かな。」

「5年か。長いね…」


嬉しさの後に悲しみが溢れる。それでも大翔を応援したくて、必死に涙を堪える


「俺が行った後に秋に伝えてくれるか?必ずお前を迎えに行く。明先輩から奪ってやるってな」

その言葉に私は

「…っつ!!分かった伝えとく」

震える声でそう答えた。涙が溢れ出しそうになる

「大翔。ごめんね。ちょっと用事思い出した。」

「おう。」

私は堪らなくなって、その場から離れた。


そのまま保健室のドアを勢いよく開けて、ベッドに横になった

「こら、谷口さん‼︎ドアをそんな風に開けたら壊れるでしょ‼︎どうしたの?」

保健の先生が近づいて来る。

「ごめん。先生。お腹痛いから少し寝かせて‼︎」


「分かったわ。仕方ないわねー。しっかり寝るのよ」


私は頭から布団をかぶり声を押し殺すように泣いた
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