大切なヒト
「柚っ!」
おそらく華であろう声で僕は我に返った。
振り返ると予想道理華がいた。
「あぁ華、ちょうどいいところに。今行こうと思ってたんだ...はい、これ。」
鞄をあさり鈴の時と同じ様に包みを渡すと華からも包みを渡らされた。
そういえば華とは交換って約束だったっけ。
「ありがと。」
受け取った華の包みからもバレンタイン独特の甘いにおいがした。
「じゃ、ウチもど...」
途中まで喋った華を遮って声をかけ、さっきメガネの彼に渡そうとした包みを華に渡した。
「これ、立花君に渡してくれない?」
そういうと華は渡された包みを眺め不思議そうに何故かと聞いてきた。
それに僕は、余ったから。と適当な言い訳をした。
いろいろ聞かれると何かと面倒なのと、出来れば誰にも片想いの事など話したくなかったのだ。
「ん。わかった、渡しとくよ。」
こういうとき華はいい。
関心がないと言ってしまえばそれまでなのだが、必要以上に人の領域に踏み込もうとしない。
きっとそれは華自身も踏み込まれたくない領域を持ってるからだろう。
お互い干渉しなくていいのは気が楽だ。