続★俺だけの家政婦さん
即座に否定しようと思ったのだが、野末くんの顔は何でもお見通しと言った顔つきで

下手な事言うと言わなくてもいいことを言っちゃいそうで

私は仕方なく頷いた。

「で?何を言われた?」

人気作家というのは人の心や表情を読み取る才能でもあるのだろうか

決して悪いことしてる訳じゃないのに野末くんの全てお見通しさ!と

言わんばかりの目で見つめられると

言葉が出てきそうになる。

でも無理無理。

私たちのことをネタにした話を書こうとしているなんて言えるわけがない。

そんなこと知ったら激怒するどころか

私との過去をえぐる様な事も言いかねない。

あの暗い過去を須藤先生に暴露して

それを面白がって須藤先生が小説にする・・・ぎゃ~~~!

無理無理

そんなことになったらもう私、人間不信になっちゃう!

「野末くんと須藤先生の出会いの話を聞かされたの。
お互いに女だと思ってたとか・・・彼女が・・・いったって事とか・・・
まぁ~私にとってはどうでもいい話だったけどね」

野末くんはハッとして本の少しだが視線をそらし、バツの悪そうな顔をした。

私もこれ以上ここにいると余計なことを言ってしまいそうだったので

部屋に戻るために立ち上がった。

「私、もう寝るよ。その空き缶の入った袋ちょうだい。片付けるよ」

手を差し出すとなぜかその手を野末くんが握った。
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