続★俺だけの家政婦さん
「もし、お前が俺の知らない奴の家で住込みの仕事するなら俺の-」

「勝手なこと言わないでよ」

私は思わず椅子から立ち上がった。

「栞里?」

野末くんが驚いた顔で見上げる。

「どれだけ私を振り回せば気が済むの?私事振っておいて、ほとぼり冷めた頃に
住込みで働かせ、その上何?今度は私の決まってもいない仕事先の指図までするの?
いつまで私を苦しませれば気が済むの?大体、野末くんには好きな人がいるじゃん!
私の事はもうほっといてよ!」

私はごちそうさまも言わずに自室のドアを乱暴に開けるとその勢いのまま閉めた。

部屋に入ると、電気もつけずにベッドに横たわった。

何なのよ。もう訳わかんない。

あんなこと言われて私が喜ぶと思ってたの?

冗談じゃない。言う相手が違うっつーの。

ああいうことは恋人や好きな人に言うことであって

振った女にいう言葉じゃないんだから!もう最悪


トントンー


ノック音が聞こえる。

「栞里?・・・おい栞里・・・話があるきいてくれ」

ドア越しから聞こえる野末くんの声は焦っている様だった。

でも、私は返事をしなかった。

野末くんは何度も何度も私の名を呼ぶが

呼ばれると、呼ばれただけ意地になって返事がしづらくなっていた。

挙げ句の果てには

「何も話す事はないから・・・おやすみなさい」と自己完結させてしまった。

そしてしばらくすると野末くんのスリッパの音が遠のいた。
< 161 / 181 >

この作品をシェア

pagetop