続★俺だけの家政婦さん
別に何か期待していたわけじゃない。

むしろこういうドライな感じが理想的だったのに

私の気持ちはどんよりしたままだった。

このままずるずると長居するともっと想定外の感情が襲ってそうな予感がして

私は逃げるように廊下に出た。

そしてエプロンのひもを結びなおし、最後の仕事


掃除の済んでいない野末君の寝室へと入った。


―-パタン

寝室のカーテンを開けて、窓も開ける。

そしてベッドメイキング、掃除機をかけた。

2か月前はここに入るのも掃除するのも嫌で、神様が私に試練を与えたに違いないとさえ

思っていたけど、今こうして最後の掃除をしてることに名残惜しさを感じてる。

……っていやいや、何考えてんの?

ここはせいせいするって思うべきよ。

あ~~きっとこれは単なる情がわいたってだけよ。

次の仕事が決まればここでのことはきっと忘れるはずよ。



「では、失礼します」

朝食の片付けも済み、やるべき仕事はすべて終わった私は玄関で最後の挨拶をした。

「……あぁ」

渋い表情で言葉少なげに答えた野末君はまたも何か言いたそうに再び口を開いたが

思いたどまるように口を閉ざした。

私はもう一度深々を頭を下げた。

そして顔を上げると「また御用がございましたら竹原家政婦紹介所をよろしくお願いします」

と笑顔で家を出た。

外には既に会社のワゴン車が止まっていた。

男性スタッフが玄関横に置いておいた自転車を車に積み込むと私も助手席に座った。

野末君が外で見送ってくれるかもなんてほんの少しだけ期待したが何もなかった。


そして私の住み込み家政婦は終わった。
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